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REPORT 実施事例レポート

CHIBA

  • 社会のリアルと私

    01

    社会のリアルと私

    みんなはどんな時代を生きていくのか

    【実施地域】千葉県内の中学・高校6校、東京都内の中学1校
    【実施主体】植草学園大学・野澤研究室+NPO法人千楽

    • 概要

      植草学園大学の野澤和弘副学長(教授)が戦後から現在に至るまでの社会と福祉について説明し、これからの人口減少と多様化が進む社会について語る。NPO法人千楽の職員や大学生らが福祉という仕事について、大学で福祉や障害についてどのように学んでいるかを話す。講義後には多数の素朴な質問や意見が中高生から出る。グループワークをやった回では中高生らも積極的に発言した。

    • 授業のポイント

      1. 障害って何?
        「障害者」とは何だろう。車いすに乗っている人(身体障害者)、白い杖をついている人(視覚障害者)、手話を使っている人(聴覚障害者)、IQ(知能指数)が40の人(知的障害者)、幻聴や妄想がある人(精神障害者)。
         では、視力が0.01だがメガネを掛けて働いている人、難聴だが補聴器を付けて働いている人、てんかんがあるが薬を飲んでいるので発作を起こさない人などはどうか?
         身体や知能の一部が欠けている・劣っている、つまりその人自身に何か問題があるという考え方を「障害の医学モデル」という。一方、「障害の社会モデル」は社会の側に障壁(バリアー)や偏見がある、配慮が足りないという考え方。いろんな身体や知的な特性があっても、社会の側がそうした特性に配慮してバリアーをなくせば困らずに生きていける。そういうバリアーを無くしていかなければならない。
         障害や福祉に関する古い概念しか教えられてこなかった中高生たちに、先入観を排して現実の社会で生きている障害者の実像を伝える。
      2. 地域共生社会とこの国の未来
        戦後間もないころは、高齢者も障害者も子どもも家族がケアをしていた。都市に人口が集まり雇用労働が中心になるにつれて、核家族化やシングル、独居が増えてきたため、家族や隣近所の支え合いが薄くなり、公的な福祉サービスが必要になってきた。
        最近は虐待、自殺、ひきこもり、ゴミ屋敷、特殊詐欺被害などが増えている。孤独や疎外が人々の暮らしに深刻な影響を与えている。公的な福祉サービスの拡充だけでなく、地域の課題は住民自身が解決に取り組むこと、支えられる側(障害者など)も積極的に社会に関わって支える側に回ること、高齢者も障害者も子どもも横断型の福祉に変えていくこと――などを核とする「地域共生社会」が今は目指されている。  時代とともに社会課題は変わり、福祉を必要とする人も変わってくること、これから中高生が生きていく時代にどのような福祉が求められていくのかを想像しながら、身近にある切実な問題であることを実感してもらう。
      3. 人は何のために生きるのか
        ALS(筋萎縮側索硬化症)の岡部宏生氏の東京大学での「障害者のリアルに迫る」ゼミを紹介。寝たきりの状態の岡部さんが、若くて前途洋々たる東大生たちに対して「君たちの心は動いているのか」と問いかける。誰もそれに答えられない。学歴社会を勝ち抜いてきた東大生たちだったが、生きるとは何なのか、命とは何なのかという問いかけに価値観が揺らぐ。中には障害者や生活困窮者の支援の仕事に就いた学生もいる。
         すぐに答えが出なくてもいい。出るものでもない。人間が生きるとはどういうことか、命とは何なのかをじっくりと考え悩むことはとても大事。そういう若者たちに次の世代を支えてほしいと訴える。
        学歴社会のまっただ中にいる中高生たちは静まり返って聞いている。目の前の勉強や受験準備に追われ、何のために生きているのかなんて考えたこともない、生きている実感も持てないという中高生も多い。そうした中高生に障害者や高齢者の支援の奥の深さ、魅力を感じてもらう。
      4. 福祉という仕事の魅力
        慶応大学を卒業したNPO法人千楽の職員、三澤朋洋がどうして障害者支援の仕事に就いたのか、ふだんはどのような仕事をしているのか、支援の仕事の奥深さを語る。大学生たちは中学や高校までと大学の違い、授業やボランティア・アルバイトで出会った障害者、自らの障害について語る。  授業前の福祉の印象を「何とも思わない」「障害者を助ける仕事」「ただただサービスする仕事」とアンケートに書いた生徒は、授業後には「なんだか、すごい」「人の心を動かす仕事」「その人の人生までもサポートする仕事」と書いた。
         後日、関心を持ったと言ってNPO法人千楽へ3人の高校生が見学にやってきた。4時間以上にわたって職員や大学生と話し合い、難病患者の話を聞いて帰った。

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    実施記録

    2021年実施
    実施校:北海道札幌開成高校/
    実施団体:社会福祉法人ゆうゆう

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